2011年1月20日木曜日

「これから論文を書く若者のために」を読む

これから論文を書く若者のために
著者 : 酒井 聡樹
出版社: 共立出版
発行年: 2002

著者サイト: 若手研究者のお経 -- これから論文を書く若者のために --


論文執筆におけるセオリーはもちろん、論文を書くにあたっての心構えやら引いては大学生としてのありかたまでやたら親切に教えてくれます。この人の研究室は絶対楽しい。
大学生も一人の研究者であることを意識させられました。僕が読むとやる気が出る種類の本です。






■論文とは

論文とは、以下の条件を満たす文章である。
・未解決の問題に取り組んでいる
・その問題の解決を多くの人が望んでいる
・その問題の解決に、何らかの新しい貢献をしている



■なぜ論文を発表するのか

論文は、以下のような目的をもって公表される。
・自分の得た研究成果を読者に正確に伝える
・研究の価値を認めてもらう



■論文の種類

論文には以下のような種類がある。
・原著論文: 新しい研究成果の報告のための論文。専門家を対象読者とし、学術雑誌に掲載される。
・総説論文: その分野の今研究の総括。専門家を対象とし、学術雑誌に掲載、もしくは単行本化される。
・紹介記事: その分野の研究成果を紹介、解説したもの。一般も対象としている。一般雑誌にも掲載。
・学位論文: 博士号、修士号など、単位の申請のための論文。対象読者は大学の教員。



■論文の著者
論文の著者となる資格を有するのは、以下の条件全てを満たす人である。
・研究の構想と設計、またはデータの獲得、またはデータの解析と解釈に重要な貢献をした
・草稿の執筆、または、草稿の重要な知的内容の改訂を行った
・論文の最終稿(印刷原稿)を承認した



■論文のタイトル
良いタイトルとは、以下の3つを備えたものだと考えられる。
・わかりやすいこと
・論文の中身が想像できること
・読者の興味を惹くこと

論文の中身とは以下のようなもののことである。
・取り組んだ問題
・着眼点
・研究対象
・研究手法
・研究結果(考察・結論を含む)



■イントロダクション
イントロダクションは、論文の目的、意義を述べるためにあるものである。
イントロダクションでは、論文の目的を伝え、かつ、それらを明らかにすることの学術的意義を説明する。
イントロダクションには、以下のようなことを明確にすべきである。
・何をやるのか
・どうしてやるのか

また、どうしてやるのかを説明するには、はさらに以下のような項目を明確にしなければならない。
・どのような問題があるのか
・どうしてその問題に取り組むのか
・その問題の解決のために上記「何をやるのか」をなぜ行うのか



■材料と方法(Materials and methods)
論文である結果を主張するには、その結果を得る為に行った研究方法を説明しなくてはならない。
研究方法は、以下のように章立てて説明することが多い。
▽この章を書く目的
・研究方法が適切であることを示す
・読者が研究を再現できるようにする
▽読者に示すべき情報
・実験・調査・観察の対象
・実験・調査・観察の方法(論理的研究の場合はモデルの説明)
・データ処理の方法
▽実験・調査・観察の方法とデータ処理の方法を説明するために
・その実験・調査・観察を何のために行うのかの説明
・その方法を他の研究者が再現できるようにする
・その方法を用いることが適切であることを理解してもらう


■結果(Results)
研究結果を書く章では、以下のようなものが求められる
・データの無駄の無さ、結論を支えるのに必要なデータだけを載せる
・わかりやすい形でデータを提示する
・データが持つ情報を短い言葉にまとめる


■考察・結論
考察で書くべきことは、以下のようなことである。
・結果の章で提示したデータに基づいて、明らかにしたいことの主張を展開する
・イントロダクションで提起した問題の解決に向けてどう貢献できたのかを述べる
・その問題を解決したことでもたらされる、より一般的な学術的意義を述べる
・今後の発展を述べる
・結論を述べる

以上のようなことを書くときの注意点
・結果の章で提示した全てのデータを使って議論する
・データが持つ情報をまとめた短い言葉を使って議論する
・図表を引用しながら議論する
・データの足りない点も述べる
・目的を持って文献を引用する
・感情論を入れずに、論理的に書く



■引用
論文、書籍からの引用は、以下のことに気をつける。
・正確に引用する、独自の解釈を挿まない
・どの部分が引用なのかわかるようにする



■アブストラクト
アブストラクトは、本文が完成してから書く。
アブストラクトには、以下のようなことを書く。
・取り組んだ問題
・着眼点
・研究対象
・研究手法
・研究結果(考察を含めてよい)
・結論

アブストラクトを書くときの注意事項
・「どうしてやるのか」は不要
・結論を明確に
・短い文章で



■文献情報の収集
新しく発表された論文の情報を素早く得る
・最新号の目次の配信サービスに登録する
・学術雑誌のウェブページを見る
過去の論文にさかのぼって関連文献を網羅的に探す
・電子文献データベースで網羅的に検索する
・論文の引用文献リストを見る
・電子文献データベースでその論文を引用している文献を検索する
文献の入手方法
・インターネットでPDFファイルをダウンロードする
・図書館で論文をコピーする
・文献の複写依頼をする
・著者にPDFファイルまたは別刷りを請求する

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